複数人の参加者がグループになって議論する「グループディスカッション」。取り入れる企業が増えていますが、苦手と感じている就活生も多いようです。
県ではグループディスカッション実践セミナーをオンラインで開催。その様子をレポートします。
グループディスカッションは、実践が大事!
シューカツNAGANOキャリア相談室の高橋さんは「グループディスカッションは、やってみたもの勝ちの面が大きい。まずは経験してみましょう」と話します。
今回はディスカッションだけではなく、ご参加いただいた協力企業の採用担当者からフィードバックもしていただけます。
(左から)株式会社みすずコーポレーション・大久保さん
エプソンアヴァシス株式会社・北原さん
上田市役所・藤森さん
そんなわけで、さっそくセッション1を開始。テーマは「企業が求める人材像」。時間は20分と短めで、まとめや発表はなし。企業の採用担当者3名、参加学生12名ということで、各グループ4人ほどでディスカッションします。
それぞれのグループで話していたことをピックアップして紹介します。雰囲気が伝わるでしょうか?
グループ1
「テーマがざっくりしているので何から話せば…まずは社会人として必要なことを話してみましょうか」
「コミュニケーション能力はどの企業でも求められていると思います」
「確かに採用サイトなどを見ても、どの企業もコミュニケーション能力は書いてありますよね」
「もう少し具体的に言うと…うーん、人に対応できる力、ってことですかね?」
「この間参加したインターンシップで、人事の人は素直さが大事と言っていました」
「私は、インターンで自分の言葉で伝えられる人が必要と聞きました」
「人の話を聞くだけではなく自分の考えも言える、受け身ではダメってことですかね」
グループ2
「積極性と協調性のバランスが大事だと思います」
「積極性と協調性という言葉が出ましたが、具体的には…?」
「例えば…上司に何か指摘されたときに、納得したという言葉の後に、自分の意見も添える感じですかね」
「先ほどの話にもありましたが、まずはいったん受け止める必要があるかも」
「自分の意見を言う前に、まずは分かりましたという気持ちを返すことが大事だと思います」
グループ3
「ある程度、業種を想定して考えてみたほうが良さそう。IT業界の場合とか、どうですか?」
「インターンに参加して聞いたのは傾聴力。お客様の話を聞くことが大切、と」
「それはヒアリングをしっかりする、ということですかね?」
「プログラマーでいえば、主体性や向上心などが当てはまるように思います」
「ITというと数字に強いほうがいいと思いますか?」
「私は文系ですが、インターンでは数字よりも向上心や新しいことを学ぶ意欲を重要視していました」
ポイントとなるのは、話すと聞くのバランス。話さないのもダメですが、自分の思いを話し過ぎるのもNGです。相手の話をしっかり聞いて、「先ほどこういう話がありましたが~」と引用したり、「〇〇さんはどうですか?」とほかの人に振ってみたりして、「皆で話す」ことを意識することが大切です。
テーマに沿って本格的なディスカッション
後半は、協力企業として参加している3社を想定したテーマを設定。各社の担当者が見守る中、事前に配られていた各業界の資料を基にしつつ、ディスカッションを進めます。
今回は、司会や発表者などの役割を決めて進行します。質問がある場合は、加わってくれている担当者に聞いてみてもOK。40分間のディスカッションをした後に、まとめて発表します。
それぞれのグループの様子を、協力企業の担当者のコメントと共に紹介します。
グループ1
テーマ【ICT技術を使って快適なリモートワーク環境を作る】
◎ディスカッション
「ハード開発よりもソフト開発のほうが考えやすいのでは?」
「では、スマホなどの端末で使えるアプリを想定してみましょう」
「リモートワークが多く、自宅でスクワットや筋トレをする人が増えたと思います」
「運動量と勤務時間を照らし合わせてアドバイスをする仕組みはどうですか?」
「リングフィット(アドベンチャー)のようなゲームと組み合わせると楽しいかも」
「筋トレは効果の測定が難しい。ゲーム的な動きがあったほうが取り入れやすいかもしれませんね」
それぞれの意見を聞き、そこにアイデアを重ねるようにして議論を行い、アプリを考えていきました。
「ゲーム感覚で運動を行いながら運動不足を解消するアプリ」
運動の様子をカメラで読み取り、運動量をアプリが記録、消費カロリーなどを見ながら運動の計画を立てます。
社内、部署などでグループを分けて成績や成果を見える化。競い合いながら高めていきます。
社内だと本名でのやり取りがハードルになるかもしれないのでユーザーネームも設定可能。社内でランキングを作っていろいろ人が楽しみながら参加できる工夫もします。
エプソンアヴァシス株式会社・北原さん
参加者皆に話を聞きながら議論したのは良かったです。ただ、まんべんなく聞き過ぎて、個人ワークになってしまった面もありました。より自主的に意見をかぶせるようにしていくことで、もっと幅広いアイデアが生まれると思います。
実は、歩数を競うイベントは会社でもあり、チーム対抗や会社対抗で競う合うこともしています。
皆さんの提案は実際の活動にも似ていたので驚きました。
グループ2
テーマ【大豆を使った商品を提案せよ】
◎ディスカッション
「若者世代の豆類摂取量は少ないですね」
「ターゲットを大学生にして考えてみるのはどうでしょう?イメージしやすいので」
「私は豆乳が好き。でも女性が飲むイメージ?」
「ターゲットをより絞って、女子大生で考えてみましょうか」
「もともとある商品に、プラスアルファして提案するのもありですか?」
「若者にアピールするなら、使い切り、小さいサイズのものを考えたいですね」
豆類の年齢階層別摂取量のグラフを参考にターゲットをしぼり、既存商品にプラスアルファした商品を検討しました。
「豆乳プリンのきなこあんみつがけ」
女子大生がどんなスイーツが好きなのかを検討しました。
スーパーで販売することを想定し、豆乳プリン、豆乳アイス、きなこあんみつ、きなこかき氷というアイデアが出たので、それを融合しました。
豆乳プリンの甘さは控えめにして、コーヒーゼリーのミルクのようにきなこあん、みつの量を調整できるようにし、甘いものが苦手な人も食べやすいものを考えました。
キャッチコピーは「おいしくエステ」です。
株式会社みすずコーポレーション・大久保さん
自分たちが考えやすいように、ターゲットを調整しながら話し合いを進められたのがすばらしかったです。
パワーポイントを使ってまとめたのはいいですが、テキストを入力している間に「待ちの時間」ができてしまったのがちょっともったいなかったかな。話し合いにもっと時間を割いて、いろいろなアイデアを出せると良かったと思いました。
グループ3
テーマ【笑顔あふれる地域づくりを提案せよ】
◎ディスカッション
「若い世代、中高生をターゲットに考えてみましょう」
「何を伝えるべきか…今は国でもデジタル教育を進めていますよね」
「専門家を招いてデジタル教育を行い、生徒だけではなくて先生も学べるようにしていくのはどう?」
「動画作成やプログラミングの授業があってもいいかも」
「地域のことを考えると、長野で働く魅力を伝えることで流出人口を抑えたい」
「探究活動のようなイメージで、長野で働く魅力を伝えることができればいいのでは?」
人口15万人ほどの自治体の企画担当職員で事業費は2000万円程度という設定。教育・産業・多様性などのテーマから1つ選び、具体的な方策を検討していきました。
「学び、教育の方に焦点を充てる施策を」
中学校に1人1台タブレットを導入し、機器の支援と人材の支援を行います。
学外から専門家を招いて先生と生徒、両方に教えることで、使いこなせる人を育成します。
また、県内で働く人との交流会を開き、課題について考えるコンテストを開催。学校の枠組みを超えて参加できるようにしたいと考えました。
上田市役所・藤森さん
タブレット端末の導入などは実際に市でもやっている、レベルの高い内容の提案だと思いました。導入だけではなく人材の確保なども考えられているのが良かったです。
教育についても「信州上田学」というのを実際にやっていて、実際の政策レベルに近い。コンテストはなかなか私たちでは考え付かない視点なので、この辺りをもっと深堀りしていくと、より面白い案になったかもしれません。
グループディスカッションの技術は、社会人になっても役に立つ
長時間のディスカッション、お疲れさまでした!
最後に、質疑応答と、協力企業の担当者からのアドバイスを紹介します。
同じような意見しか出なくなって、同調しているだけになってしまいます。
問題点に立ち返ることを意識してみてはどうでしょうか。立ち返る、原点に返ることで違う見え方が出てきて、新しい視点が生まれます。あとは、自分の武器、引き出しを持っておくことも大事。就活で忙しいかもしれませんが、学生時代に挑戦できることをいろいろやって、引き出しを増やしておくといいと思います。
どうしても司会役の人が目立つと思うのですが…それ以外の役割の人はどうすればいいですか。
役回りは見ますが、「本当はできるけど今は譲っている」「与えられた役に徹している」ということも実は意外と伝わっています。テーマに合わせて、役割をこなせているかが見るべきポイントだと思っているので、まずは与えられた役割を全力で頑張ってみてください。得手不得手もあると思いますが、企業はちゃんと見ているので得意なところを伸ばしてほしいです。
グループワークで一番大事なことは?
リーダー、発表役、タイムキーパーなど、それぞれが役割を果たして建設的な話し合いが進められているか、チームできちんと取り組めているかがポイントになります。初めて会った人とチームを作るのはなかなか大変だと思いますが、自分を出すことを恐れずに挑んでください。ディスカッションだけですべてを判断するわけではなく、集団の中での姿、立ち振る舞いを見ています。普段の生活でも自分の立ち位置を意識してみるといいトレーニングになると思います。
最後に、高橋さんからのアドバイスです。
高橋さん
ディスカッションのスキルは、就活だけではなく入社後にも必ず役に立ちます。そういう意味で、今から積極的に取り組んでおいて損はありません。回数を重ねると格段に腕があがるので、学校などでも機会があればやってみてください。
参加した就活生からのコメント
終了後に参加者からいただいたアンケートを紹介します!
- 企業の方に直接フィードバックをいただく機会がなかなかないので、貴重な体験になった。自由型と課題解決型で見られている点や求められる力が違うということも新たな発見でした。
- 実際に体験してみて、枠組みやどこに絞るのかを最初に決めてから話し合うことが大切であると痛感しました。自分に足りないものやコツを知ることができて良かったです。
- 企業側がグループディスカッションで注視していることを知ることができ、大変勉強になりました。今回見つけた自分の課題は、次回のグループディスカッションで改善していきたいと思います。
- グループディスカッションの経験がなかったためどのように進めれば良いのか戸惑う場面もありましたが、自分がどういった役割に合っているのかが何となく分かったり、他の学生の方の発言から学びを得られたり、とても良い経験になりました。
- 初めての人たちと話し合うのは難しかったですが、分からなくても何か意見を言ってみることが大切だと思いました。企業の方から聞かれたことについて適切に答えることが重要だということをおっしゃっていたのでそこは意識していきたいと思いました。
県では今後もさまざまな形で就活をする学生の皆さんに向けたイベントを開催していく予定です。イベントは、LINEやメルマガで最新情報をお届けしているので、ぜひご登録ください!